2007年06月07日

『シロツメクサの王冠を』

  サスケの散歩をしていたら
  川べりの土手に
  シロツメクサが咲いていました。


 毎朝、歯を磨きながら
 洗面所の壁に留めてある葉書を
 鞠子は何度も読み返す。

 四つ葉のクローバーを探し
 シロツメクサで王冠や指輪をつくり
 スミレの花の蜜を吸ったことを
 懐かしく思い出す。

 思い出したように届く葉書。
 丁寧に書かれた豪快な印象の文字。
 彼が毎回どんな顔をして
 葉書なんてしたためているのかを
 想像するだけで頬がゆるむ。

  近所の八百屋で
  枇杷を買いました。
  今年のハツモノです。


 メールもある。
 ケータイも持っている。
 なんならFAXだって。

 たわいない日常の欠片を
 書き溜めただけの手紙。

 だからこそ、いとしくて、
 何度も読み返してしまう。
 短い数行の内容なんて
 すぐに暗記してしまうのに。

 文字を追っかけていくことで
 彼とのキョリが少しだけ
 縮まるような気がして。

  昨日見た夢で
  君が笑っていました。


 「会いたい」の一言でも
 書いてくれればいいのに。
 そしたらいますぐにでも
 会いに行けるのに。

 電話して話すほどのことじゃなくて。
 メールで送るほどのことでもなくて。
 ましてや、FAXも使わない機能でしかない。
 だけど、
 葉書だから
 たったひとことを伝えることができる。

  サスケに友だちができました。
  チビちゃんといいます。
  友情がいつか
  恋情になるかもしれません。


 友情が恋情に
 変わる瞬間には
 いったい何があるのだろう。

 初めて送る手紙は
 シロツメクサの王冠と一緒に。
 なんならわたしが届けたっていい。

 小さな公園に咲く
 シロツメクサの群を眺めながら
 鞠子は大きく伸びをした。

img006.jpg
 ©手描染屋眞水
posted by しがない物書き椿屋 at 22:55 | 京都 ☀ | Comment(2) | TrackBack(0) | たゆたふ欠片
この記事へのコメント
読みました。かわいらしく、やさしく、素敵でした。
Posted by 雪だるまの白 at 2007年06月09日 04:06
>雪だるまの白さま
感想おおきにです!!
本人はかわいさややさしさとは
程遠いキャラなのですが…
まあ、作品で欲求を解消している感じですかね〜。
Posted by 涼 at 2007年06月09日 16:41
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